最近、インターネット上の誹謗中傷がますます問題視されています。
ネットに書き込む人は深く考えていなくても、言われた側は深刻に悩んでしまい、うつ病や自殺に追い込まれる危険も。
それに対し最近では、有名人がネットの誹謗中傷書き込みに対して刑事告訴する動きも活発化。
この動きによって、ネットの誹謗中傷は少しずつ減るのではとも思いますが、実際に刑事告訴された場合に裁判にどのくらいの期間がかかって、賠償金がどの程度なのか気になったので調べました。
- 芸能人の誹謗中傷に対する刑事裁判事例
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川崎希さんの事例

元AKB48のメンバーでタレントとして活躍する川崎希さんは、数年前からネットの匿名掲示板などで悪質な嫌がらせを受けていたといいます。
川崎は2019年10月3日に本人のブログで、やってもいない無銭飲食や窃盗のクレーム連絡を、本人の行ったレストランや店舗に対し入れられていたことや、妊娠発表後に「嘘つくな」「流産しろ」といったメッセージが毎日届いていたことなどを告白。
「匿名の掲示板でみんなで自宅に着払いで荷物を送ろうと呼びかけられたり海外にいる間は放火するチャンスと言われたりしてこわい思いもたくさんありました」と、恐怖を感じていたことも明らかにしました。
出典:女子SPA!
- やってもいない無銭飲食や窃盗のクレーム
- 妊娠発表後に「嘘つくな」「流産しろ」
- 「海外にいる間は放火するチャンス」
度を超えた書き込みですよね。
もはや誹謗中傷を通り越して、脅迫と名誉棄損です。
その後、川崎希さんは弁護士に依頼して裁判所を通じて誹謗中傷書き込みの発信者情報開示請求を行ったそう。
そして、名前と住所を特定した上で刑事告訴し、女性2人が侮辱罪で書類送検されました。
そして後日、ご自身のブログで以下のようにコメントされています。
今回の件について、私は、書き込みをした人に対して、罰したいという気持ちがあったわけではなく、悪意ある書き込みをすれば刑事罰が科されるということをわかってもらい、きちんと反省して、今後は二度とこのようなことをしないと思ってほしいと考え、刑事告訴に踏み切りました。
現在は書き込みのあったスレッドが完全に閉鎖され、書き込みをした2人も深く反省していると聞いています。
また、匿名掲示板であっても、悪意のある書き込みをした人の住所や氏名は手続きをすれば開示され、刑事事件としても取り扱われ、取調べを受け、刑罰を科される可能性があることを、2人は十分に認識したと思いますし、私がこのブログでメッセージを発信したことにより多くの方々にも認識いただけたと思います。
その意味で、私自身が時間と労力をかけて手続きを進め、刑事告訴を行ったことの意味は十分にあったと思いますので刑事事件となったことで、今後の悪質な書き込みに対する抑止の効果もあったと思います。
私自身、こうした様々な事情やこれまでの経緯も考えた上、家族や周囲の方々とも相談し、ご意見も伺い、今回の刑事告訴はここで取り下げるということにしました。
出典:川崎希オフィシャルブログ
匿名の書き込みで自分の住所や名前まで判明できることを知らない人は多いと思います。
そのため、刑事告訴の前例を作るという社会的意義で刑事告訴したとのこと。
一方で反省したら告訴を取り下げたというのは、今まで相当に怖い思いをされていたにも関わらず、優しい対応です。
春名風花さんの事例

「はるかぜちゃん」の愛称で知られる女優の春名風花さんは、ツイッターを始めた9歳の頃から10年もの間、ネット上で誹謗中傷を浴び続けてきたそうです。
お風呂場の窓から、知らない人が手を入れてきたり、近所で、“きみの学校に春名風花さんっている?”などと聞き込みをする人も現れ、危険が迫っているのを感じました。あまりの恐怖に、家から一歩も出られない日々が続きました
出典:『女性セブン』(2020年3月29日)
- お風呂場の窓から、知らない人が手を入れてくる
- 知らない人が自分を探してやってくる
「彼女の両親自体が失敗作」などと書かれた誹謗中傷ツイートをうけ、春名風花さんは母親と共に名誉毀損と侮辱の疑いでツイート主を告訴することに。
しかし当時は発信者情報開示も断られ、2018年10月にプロバイダーに発信者の情報を求めた訴訟からはじめなければいけませんでした。
しかし1年後、東京地裁がプロバイダーに氏名や住所などの開示を命じ、やっと刑事告訴できることに。
一方ツイートをした側は警察から電話があった翌日に、代理人弁護士を通じて「示談金を支払うので、告訴を取り下げてほしい」と春名風花さんへ連絡したそう。
結局春名さんは、刑事告訴を取り下げ、示談金計315万4000円を受け取ることになりました。
ツイッターに虚偽の内容を投稿され名誉を傷つけられたとして、女優の春名風花さん(19)と春名さんの母親が、書き込みをした人物を相手取り、慰謝料など265万4000円の支払いを求めた訴訟は7月16日、横浜地裁で刑事告訴の取り下げと被告側が春名さん側に示談金計315万4000円を支払う内容で示談した。
出典:弁護士ドットコムニュース
この結果について、春名さんは以下のように述べています。
何より相手の身元を特定できたことで、誰に狙われているかわからない恐怖から、何万分の一でも解放されたことは大きいです。
お金そのものが心を癒すことはできなくても、勉強や仕事のため役者として頑張るために使おうと思う
出典:弁護士ドットコムニュース
春名風花さんの例では、プロバイダに情報公開を申請するところから裁判になってしまい、2年以上の歳月をかける結果に。
10年間誹謗中傷や脅迫に苦しみ、2年の裁判を経て、ようやく成立した示談。
315万円の示談金を得ましたが、裁判費用や警備費用がかかっているため、とても示談金では補えないほどの出費もあったそう。
精神的に追い詰められただけでなく、これほどの出費がかさんでいたと思うと、いたたまれなくなります。
春名さんによると、学費を裁判費用に使ってしまったので、そのぶん奨学金を借りないといけなくなったそうです。また、警備費用や失った仕事の数を考えると、とても示談金では補いきれないとのこと。
出典:grape
裁判を終えた現在も「悪口をいわれたくらいで示談金を貰えていいな」などと春名さんを批判するような書き込みもあるとか。
せっかく裁判で勝ったのに、また心無い言葉をかけられる…この中傷の無限ループからいつまでも抜け出せないのは、気の毒すぎます。
堀ちえみさんの事例

2019年2月、舌がんの手術の前日に堀ちえみさんはブログ欄に「死ね消えろ馬鹿みたい」と書き込まれ、食道がんの手術後には「癌なのにあちこちでたたかれて笑えるわ 次はどんな病気?(笑)」「死ねば良かったのに」などと誹謗中傷を受けました。
数ヶ月にわたって何度も誹謗中傷のコメントが投稿されたということで、堀ちえみさんの関係者は警視庁に被害届を提出。
1019年6月に、誹謗中傷のコメントを書き込んだ北海道在住の50代主婦が脅迫容疑で書類送検されることになりました。
- がん手術前日に「死ね消えろ馬鹿みたい」
- がん手術後に「癌なのにあちこちでたたかれて笑えるわ 次はどんな病気?(笑)」
- 「死ねば良かったのに」
手術前後というナイーブなときに、畳みかけるように死ねと言ってくるあたりが陰湿です。
同一人物に何度も何度も死ねと言われた方は、さぞ怖かったことと思います。
女性は「ただちょっと書き込みした…何百回もしたわけじゃないんですよ。10回かそこらですよ?」と開き直り、「みなさん書いてるじゃないですか」「殺しに行く、とか殺すぞだったら、脅迫だっていわれても分かるんですけど、死ねでも脅迫になるんですねって感じで」などと一切反省の色を見せず、同番組司会の小倉智昭も「全然悪びれてない」と怒りをあらわにしました。
出典:情報番組「とくダネ!」(フジテレビ系)
反省していないということは、これからまた堀ちえみさんに逆恨みするのでしょうか…
誹謗中傷のスパイラルにならないか、怖いですね。
西田敏行さんの事例

俳優の西田敏行さんは、一般人が作成したブログ(まとめサイト)に事実無根の悪質な情報を掲載されて、2016年8月に所属事務所のオフィスコバックが赤坂署に被害届を提出しています。
- 西田敏行が違法薬物を使用している
- 女性に対し日常的に暴力をふるっている
- 海外で現地の女性に大金を支払って暴力を振るっている
全くの事実無根の情報だったとのことですが、そのブログの影響で西田さんの仕事の打ち合わせが一部延期になるなど、事務所の業務に深刻な実害も生じていたとのこと。
結局、偽計業務妨害容疑で警視庁赤坂署は中部地方に住む40代の女ら男女3人を書類送検しました。
動機は「広告収入のため」。身勝手な理由でウソ情報を掲載していました。
人の興味を引くような記事を掲載して閲覧数を伸ばし、広告収入を増やしたかった
出典:産経ニュース
ウソ情報でも勝手に書き込めてしまうブログやSNS。
情報の発信者にモラルが求められますね。
プラチナムプロダクションの例

元タレントの木下優樹菜さんが2019年に起こしたタピオカ事件。
このタピオカ事件が端を発したのか、当時の所属事務所であるプラチナムプロダクションに対して「反社会的勢力が社の立ち上げに関わった」などといったウソ情報が広がりました。

- 「反社会的勢力が社の立ち上げに関わった」
- 「社員の中に反社会的勢力のメンバーがいる」
タピオカ事件では、木下優樹菜さんがタピオカ店に対して「事務所総出でやりますね」という脅し文句を使ったことから、事務所に対してマイナスのイメージに繋がってしまったのかもしれません。
そのためプラチナムプロダクションは、このようなウソ情報・誹謗中傷には厳正に対処することを発表しました。

「ネットの誹謗中傷裁判の事例まとめ!賠償金や裁判期間はどのくらい?」まとめ

ネットの心無い書き込みや誹謗中傷をどうにかすべきという意見がより高まっています。
最近は誹謗中傷に対して刑事告訴する芸能人も多いため、今後、誹謗中傷やウソ情報への対処はより厳しくなっていくでしょう。
春名風花さんの例では、慰謝料など265万4000円の求めに対し、それを大きく上回る示談金計315万4000円となっていることから、誹謗中傷の罪の重さがより重くなっているとも受け取れます。
ネットの情報を発信する側も受け取る側も、より自律したリテラシーが求められますね。
