スタジオジブリの新作長編映画『アーヤと魔女』。
原作はイギリスのファンタジー作家であるダイアナ・ウィン・ジョーンズ『EARWIG AND THE WITCH』ですが、ダイアナさんは『アーヤと魔女』の続編を書き終わる前に亡くなってしまったので、色々な謎が回収されずに終わっています。
そこで今回は、『アーヤと魔女』で残った謎を解説・考察していきます。


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『アーヤと魔女』結末と残る謎は?
アーヤのお母さんの正体の謎

アーヤのお母さんは、追手の魔女から逃れるためにアーヤを孤児院「聖モーウォード子どもの家」に預けます。
アーヤはお母さんから愛されていましたが、やむなく孤児院に預けられたのです。
いつかアーヤを連れ戻しに行くと言いながら、結局お母さんは引き取りに来られませんでした。
アーヤのお母さんが魔女であることは確かですが、なぜ仲間の12人の魔女に追われることになってしまったのか、なぜアーヤを迎えに来れなかったのかなどの謎が残ります。
アーヤにしか見えないマンドレークの角の謎

「聖モーウォード子どもの家」では、マンドレークの角がアーヤにしか見えませんでした。
このアーヤだけに角が見えている理由について、原作では触れられていません。
しかしアーヤのお母さんは魔女なので、おそらく魔女の血のおかげでアーヤはマンドレークの角が見えたのではとも考えられます。
ベラ・ヤーガの仕事の謎

ベラ・ヤーガは、お客さんに呪文を売って商売しているようです。
アーヤに手伝ってもらって作った呪文を一つ一つビニール袋に入れ、そのビニール袋を買い物かごに詰めて人間の格好で売りに行きます。
おそらくお客さんは呪文が使えない人間。
しかし、具体的に誰にどのような呪文を売って商売しているのかは原作中でははっきりとしませんでした。
ベラ・ヤーガとマンドレークの関係の謎

ベラ・ヤーガはマンドレークをとても恐れ、機嫌を取って一緒に暮らしています。
マンドレークのパワハラ・モラハラに反発しつつも従っている…すっかり冷え切った夫婦のようにも見えます。
マンドレークの方が強い魔法が使えるようですが、べラ・ヤーガも魔法と呪文を使えるので、本気を出せば逆らったり逃げ出したりもできそうなもの。
それなのにベラ・ヤーガは恐れているマンドレークとなぜ一緒に暮らし続けているのか、その理由は原作では明らかになっていませんでした。
ベラ・ヤーガとトーマスの関係の謎

トーマスは、人間の言葉が話せて魔法や呪文にも精通している賢い黒猫。
何度もお仕置きとしてベラ・ヤーガにミミズの呪文でひどい目にあわされており、ミミズの呪文をとても怖がっています。
そのため、トーマスはベラ・ヤーガやベラ・ヤーガが作る呪文がキライなようで、いつも逃げ回っています。
トーマスが好きでもないベラ・ヤーガと一緒にいる理由が、原作では明らかになっていません。
マンドレークがアーヤに優しい理由

マンドレークは頑固で怖い無口なおじさんですが、アーヤが失敗しても感情的に怒鳴りつけないという優しさがあります。
アーヤがマンドレークが好きな揚げ焼きパンを作ろうとして丸焦げにしたときも、マンドレークはアーヤを起こるのではなく、「なぜ作り方を教えなかった?」とベラ・ヤーガに怒りの矛先を向けました。
また、アーヤがマンドレークの部屋に魔法のミミズを入れたときも、マンドレークはアーヤではなく魔法のミミズを繰り出したベラ・ヤーガに激昂しています。
マンドレークが怒りの矛先を向けるのは、いつもベラ・ヤーガなのです。
家の中で一番立場が弱いであろうアーヤに対して、怒るのではなく諭すような優しさを見せるところも、なぜなのかが原作でははっきりしていません。
アーヤの本当の名前は「アヤツル」。ずる賢く周りを思い通りに操るというところからきていると思われます。
アーヤのお母さんが、周りをうまく操ってアーヤに幸せになってほしい…そういった思いや魔法が背景にあるのかもしれません。
「【ネタバレ】『アーヤと魔女』で残る謎!原作はどうだった?」まとめ

『アーヤと魔女』の原作者であるダイアナさんは、2009年から肺がんで闘病生活をしていましたが、2011年3月末に惜しまれながら亡くなりました。
そして、そのダイアナさんの遺作が『アーヤと魔女』。
そのため、『アーヤと魔女』の原作ではまだ回収しきれていない物語の謎が多いのです。
ダイアナさんはジブリ作品『ハウルの動く城』の原作者でもありますが、『ハウルの動く城』も1巻目が発売された4年後、18年後にそれぞれ続編が出て全3部作となっていることから、おそらく『アーヤと魔女』も続編を考えていたのではと思います。
ダイアナさんのなかで色々と考えている構想があったと思うので、ご本人も物語にできず悔しいと思われていたのではと思いますが、しかし謎のままで終わった部分は読者が自由に想像できるところでもあります。
原作では謎のままで終わってしまったストーリー部分を、ジブリ映画『アーヤと魔女』では独自のアレンジをされていて、原作ファンも新鮮に見られたのではと思います。

