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社会・政治

元男性アスリートが女性と認められる基準値は?トランスジェンダー問題

元男性のアスリートが女性アスリートとしてスポーツ大会に出場する事例が増えてきました。

トランスジェンダー本人にとって、意識と身体の性別が異なっていることはとても辛いことだと思いますが、一方でスポーツで勝敗を決める場面でのトランスジェンダーの扱いは難しいです。

元男性のトランスジェンダーアスリートとシスジェンダーの女性アスリートが戦う場合、元から女性のアスリートが不公平だと思っても仕方ありません。

シスジェンダー(英語: Cisgender)…生まれたときに割り当てられた性別と性同一性が一致し、それに従って生きる人のこと

世界的には、スポーツ上のトランスジェンダーはどのように扱われているのでしょうか?

また、オリンピック・パラリンピックをはじめとした世界大会に出場する場合、トランスジェンダーの元男性アスリートが女性アスリートとして認められるにはどのような条件が必要なのでしょうか。

詳しく調査しました。

東京五輪2020はトランスジェンダーを認める初の五輪

東京五輪出典:https://thedigestweb.com/topics_detail13/id=44122

東京オリンピック・パラリンピックは、トランスジェンダーの選手の出場が認められるはじめての五輪です。

東京五輪は、陸上女子の一部種目でテストステロン値を基準に参加資格を制限し、「女性」として生活している選手でも「女子」で競技できないというルールを導入する最初の五輪になる。

出典:朝日新聞デジタル(2021年7月16日)

東京オリンピックでは、初のトランスジェンダー選手としてローレル・ハバード選手が重量挙げの競技に参加します。

トランスジェンダーの元男性アスリートが女性と認められる基準は?

血中テストステロンの値

IOCはトランスジェンダーのアスリートに対し、性別適合手術を受けた場合にオリンピック・パラリンピックに出場できると元々は定めていました。

しかし2015年に、トランスジェンダーのアスリートに対する規定が全く新しくなり、身体的特徴ではなく「血中ホルモン値」での判断となりました。

IOCは2015年、それまで求められていた性別適合手術を受けなくても、五輪に出場できるよう変更した。女性として生まれた選手が男子で競技に出るのは無条件男性として生まれた選手が女子で競技に出るには、自認を宣言して4年間変更せず、血中の男性ホルモン(テストステロン)の値が12カ月間一定レベルを下回っていることを証明することが必要。

出典:朝日新聞デジタル(2018年7月21日夕刊)

女性として生まれて、男性として競技に出る条件
  • 無条件で可能
男性として生まれて、女性として競技に出る条件
  • 自認の宣言から4年間性別を変更しないこと
  • 血中男性ホルモン「テストステロン」の値が10 nmol/L以下の状態を、12か月間以上保っていること
nmol(ナノモル)…濃度を表す単位

つまりテストステロンの値が1年間10 nmol/L以下で、4年間女性であることを宣言し続けてさえいれば、元男性アスリートも女性アスリートとして試合に参加できるという考え方です。

血中テストステロンのホルモン値で男性か女性かを判断するというのは、確かに科学的で基準がはっきりしています。

しかしこのテストステロンの基準値は、一般女性の28倍もあるとか。

一般女性の28倍までの男性ホルモン量なら、女性としてOKというのは、確かに不公平な気がします。

詳しい数式は割愛するが、10nmol/Lという濃度をグラム換算すると、10 nmol/L  =  2.8842 ng/mL となる。そして、一般的な女性の血中テストステロン値は0.1 ng/mL程度であるため、この数値は一般女性の28倍以上ということになり、極めて不公平な基準と考えざるを得ない

出典:WILL(2021年6月18日

女性が女性と認められない場合も

女性

国際オリンピック委員会(IOC)のガイドラインに沿って男性・女性の判断をした場合、元々テストステロンの値が高い女性が女性として試合に出られないというケースも出てきてしまいました。

オリンピック女子800mの金メダリスト、キャスター・セメンヤ選手は、女性として生まれましたが、元々男性ホルモンであるテストステロンが多い体質。

テストステロンの血中濃度で性別を判定され、女性にも関わらず女性として競技に出られなくなってしまったのです。

オリンピック女子800mの金メダリスト、キャスター・セメンヤ選手の場合、もともとテストステロンが多いため、彼女の国際大会出場を制限するルールができてしまった

セメンヤ選手はスポーツ仲裁裁判所にこうしたルールは不当だと訴えたが認められなかったので、今度は欧州人権裁判所に訴える準備をしている。これも法律問題になってきているが、健康な女性である選手に薬を投与しテストステロンの数値を下げさせるというのは、いわば患者に変えようとしているとも言えるし、道徳的に許されるべきことではないという考え方もある

出典:ABEMA TIMES(2021年2月17日)

テストステロン値で女性として競技に出られなかった女性選手例
  1. キャスター・セメンヤ選手(南アフリカ共和国)陸上女子800m
  2. クリスティン・エムボマ(ナミビア)陸上女子400m
  3. ベアトリス・マシリンギ(ナミビア)陸上女子400m

女性で血中テストステロン値が高い状態というのは、典型的な男性・女性の特徴に当てはまらない状態という先天性の病気です。

普段の生活で支障がないため自分自身でも気がつかないことも多いそうですが、生まれつきの病気で女性であることを否定され、さらに試合にも出られないとなると辛さはかなりのものがあります。

2人は原因を明らかにしていないが、高いテストステロンの血中濃度は性分化疾患(DSD)で見られる状態だ。DSDは性染色体、性腺、生殖器などが典型的な男女と異なる症状。陸上で問題になっているのは、生殖器は女性形だが、血中のテストステロン値が典型的な男性と同レベルというケース。

出典:ABEMA TIMES(2021年2月17日)

トランスジェンダーの元男性アスリートの例は?

【重量挙げのニュージランド代表】ローレル・ハバード選手

ローレル・ハバード出典:https://www.ellegirl.jp/sports/athletes/a36626816/transgender-weightlifter-laurel-hubbard-anna-vanbellinghen-21-0610/

ニュージーランドの重量挙げ選手であるローレル・ハバード(Laurel Hubbard)選手も、元男性のトランスジェンダーアスリートの1人。

1978年に男性として生まれたハバード選手は、20代の頃は男子選手として活躍していました。

しかし30代でホルモン治療を受けて女性へ性転換。

2013年に女子選手へと転向し、2020年にはイタリア・ローマで開催されたワールドカップの女子+87kg級で金メダルを獲得したのです。

ローレル・ハバード選手の経歴

1978年 男性「ギャヴィン・ハバード」として生まれる
20代の頃 男子の重量挙げ選手として活躍
30代の頃 ホルモン治療を受けて女性「ローレル・ハバード」になる
2013年 女子選手へと転向
2017年 世界選手権で銀メダル獲得
2019年 サモア開催のパシフィックゲームズで金メダル獲得
2020年 イタリア・ローマで開催されたワールドカップの女子+87kg級で金メダル獲得

ローレル・ハバード選手は、2021年6月時点で43歳

世界ランキングは17位です。

スポーツ上のトランスジェンダーに関する諸外国の反応は?

アメリカの動き

アメリカ出典:https://www.smbc-card.com/cashless/kojin/america.jsp

スポーツ上のトランスジェンダーの扱いについて、アメリカでは「トランスジェンダーで元男性の選手は、女子選手と比較して身体的に有利なため、高校・大学の女子競技への出場を禁止する」という法律がミシシッピ州で可決しました。

先週、米ミシシッピ州の上院議会で、男性から女性へ性別を変えたトランスジェンダーの選手は他の女性選手に比べ身体的に有利だとして、高校・大学の女子競技への出場を禁ずる法律が可決した。同様の動きはモンタナ州やノースダコタ州でも起きており、スポーツの世界が公平性、多様性の問題に直面している。

出典:ABEMA TIMES(2021年2月17日)

州ごとに法律が異なるアメリカ。

ミシシッピ州で「トランスジェンダーの女子選手は、女子選手として認めない」という法律が可決され、その後モンタナ州やノースダコタ州でも同様の協議がされています。

また、コネチカット州では女性アスリートが元男性のトランスジェンダー女性選手を裁判で訴える事案も発生しました。

米コネチカット州では昨年2月、高校生の女性アスリートが“自分が出ている種目にトランスジェンダーの女性が出場、上位を占めてしまったがために、自分たちは奨学金を得る資格を失った。これは教育の機会均等を定めた連邦法に違反している”という裁判を起こした。訴えられた側の州の学校協会は“全ての生徒が本人の認識する性別で扱われるべきだという州法に則った競技運営だ”と抗弁しており、法律問題になっている

出典:ABEMA TIMES(2021年2月17日)

みんなで仲良くスポーツを行う体育の授業などならともかく、自分の将来にも影響するような大きな試合や、スポーツの順位が奨学金にも影響するような場合は、女子選手も必死です。

トランプ元大統領もトランスジェンダー選手に疑問

トランプ元大統領も、トランスジェンダーの元男性選手が女性選手として試合することに疑問を呈していることを、ロイター通信がTwitterに動画で投稿しています。

上のツイートの動画をまとめると、トランプ大統領は以下のように発言しています。

男性が女性のようにスポーツできるようになったのをどう思う?

これは公平なことなのだろうか。重量挙げの選手を見たか?

女性のみなさんには言いたくないが、「彼」は皆さんの長年の記録を破った。

立ち上がって、(軽そうに)ボーン、ボーンと挙げた。9年ぶりの記録を、ボーンだ。

彼は片手で挙げたのかな。すごく不公平ではないか

出典:Twitter

やはり、男性として生まれた土台があるのとないのとでは、力の差が出るのが当然で不公平だと明言していますね。

英語だと主語が「He / She」になるので、日本語よりも性別がより意識させられますね。

オーストラリアの動き

ハンナ・マウンシー選手出典:https://jp.globalvoices.org/2018/06/28/48668/、

オーストラリアのトランスジェンダー女子フットボール選手であるハンナ・マウンシー選手は、2018年6月、州リーグで女子としてプレーすることが認められました。

ハンナ・マウンシー選手は、2013年の世界男子ハンドボール選手権に豪州代表の男性アスリートである「カラム・マウンシー」として出場していましたが、その後ホルモン治療で女性に性転換しました。

血中ホルモン値で性別を判断する国際的な基準で考えれば、トランスジェンダーの元男性アスリートとは女性として認めるべきである一方、実際の体格やパワーもふまえて「本当に女性アスリートとして認めても良いのか?」という議論がオーストラリアのなかでも議論されました。

生物学的には男性、体重100kgを超え、性転換後も変わらぬタックルができるハンナ・マウンシーという選手が、平均体重60kgの女子選手と戦えるなんて冗談だろう。可愛そうなことに、このせいで女子選手たちには数えきれない程あざができてしまうだろう。

出典:GlovalVoice(2018年2月25日)

女性としてプレーすることが認められたハンナ・マウンシー選手でしたが、身長190cm、体重100kg超えの体格があまりに通常の女性選手と差があると言うことで、世界選手権は出場できませんでした。

しかし国際オリンピック委員会の定める基準値を下回ったため、2018年に女性選手ハンナ・マウンシーとして出場することが認められたのです。

トランスジェンダーのオーストラリアンフットボール女子選手に対し、とうとう州リーグでプレーすることが認められた。

出典:GlovalVoice(2018年2月25日)

今後、こういったケースが増えるのかもしれません。

トランスジェンダーの元男性アスリートに対する日本の世間の反応は?

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